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メニエール病の鍼灸治療について

内耳の構造と役割について
内耳には大きく分けて2つの重要な器官があります。
①蝸牛(かぎゅう):音を感じる「聴覚」のセンサー
②前庭・半規管:体のバランスや頭の動きを感じる「平衡感覚」のセンサー

 これらの中は、内リンパ液という特殊な液体で満たされていて、この液体の量や圧力が、聴覚・平衡感覚の正常な働きにとても重要です。

 内リンパ水腫とは何か

メニエール病の中心にあるのが、内リンパ水腫です。本来、内リンパ液は、作られる量・吸収される量・流れる経路が絶妙なバランスで保たれています。ところが、メニエール病では内リンパ液が過剰に増えるてうまく吸収されない・排出されないなどの理由で、内耳の中に内リンパ液が溜まりすぎてしまう状態になります。その結果、内耳の中の圧力が上がり、内リンパを入れている「袋(膜迷路)」がパンパンに膨らむようなイメージになります。これが「内リンパ水腫」です。

圧が上がると何が起こるか
内耳の中には、音や揺れを感じるための有毛細胞という細かいセンサーが並んでいます。これらは、内リンパ液の状態(圧・流れ・イオンバランス)に非常に敏感です。内リンパ水腫で圧が高くなると、有毛細胞が物理的に圧迫される内リンパ液のイオンバランス(電解質の濃度)が乱れ、神経への信号伝達が誤作動・過剰・途切れ途切れになるといったことが起こります。
その結果、
①蝸牛側では→ 音の信号が乱れ、耳鳴り・難聴・耳が詰まる感じが出る
②前庭側では→ 平衡の信号が誤作動し、自分や周囲がぐるぐる回るような回転性めまいが起こる
という症状として現れます。

 「発作」として起こる理由
メニエール病の特徴は、症状が発作的に出たりすることです。これは、内リンパの量や圧が、日によって・時間によって変動するからです。ストレス・睡眠不足・塩分過多などで、体の水分バランスや自律神経が乱れ、内リンパの調整機能が一時的にさらに悪化するといった要因が重なり、ある瞬間に「閾値(限界)」を超えると急に内耳の圧が上がり、センサーが一気に誤作動するためです。
発作時には、有毛細胞や神経が過剰に興奮し、その後は興奮しすぎた反動で疲弊状態になりめまいが治まった後に、強い疲労感やぐったり感が残ることも多いです。

 発作を繰り返すとどうなるか
内リンパ水腫の状態が長く続いたり、発作を何度も繰り返すと、有毛細胞が回復しきれずに傷んで内耳の構造そのものが変性(劣化)していくと結果として、初期は「発作のときだけ難聴が強くなる」、進行すると「普段から聴力が落ちたまま戻りにくい」というように、聴力の固定的な低下につながることがあります。

 自律神経との関係
内耳の血流や内リンパの調整は、自律神経の影響を強く受けます。
ストレス・不安・過労・睡眠不足などが続くと、自律神経のバランスが崩れ、内耳への血流が不安定になり、内リンパの産生・吸収の調整が乱れます。結果として、内リンパ水腫が悪化しやすい状態になります。つまり、メニエール病の病態生理は、内耳の内リンパ水腫(液体の溜まりすぎ)と自律神経・血流・体液バランスの乱れることによって、聴覚・平衡のセンサーが誤作動し、発作的なめまい・耳鳴り・難聴を引き起こします。

 原 因
原因は完全には解明されていませんが、複数の要因が関係すると考えられています。
①ストレス・自律神経の乱れ
②睡眠不足・過労
③塩分過多による体液バランスの乱れ
④アレルギー体質
⑤ウイルス感染後の内耳障害
⑥血流障害(内耳は血流が非常に繊細)

主な症状
①回転性めまい(数十分〜数時間)
②耳鳴り(低音性が多い)
③難聴(変動するのが特徴)
④耳閉感(耳が詰まる感じ)
⑤発作後の倦怠感・疲労感
⑥症状は発作性で、繰り返すほど聴力が低下することがあります。

検 査
①聴力検査(純音聴力検査)
②平衡機能検査(眼振検査など)
③グリセロール試験(内リンパ水腫の確認)
④MRI(聴神経腫瘍など他疾患の除外)

医療的治療
①薬物療法
めまい止め
吐き気止め
②血流改善薬
③利尿薬(内リンパを減らす目的)

生活指導
①塩分制限(16g以下が目安とされることが多い)
②睡眠の改善
③ストレス管理

重症例
①内耳の圧を調整する治療
②手術療法(非常に限られたケース)

東洋医学的な考え方
東洋医学では、メニエール病は以下のように理解されます。
(1)「水(津液)の巡りが悪い」=水滞
(2)肝の気が上逆する(気逆、ストレスで気が上に昇る)
(3)腎の機能の低下(腎虚、耳は腎と関係が深い)
(4)脾の機能の低下(脾虚、体液の運搬がうまくいかない)
つまり
ストレス・疲労 → 気血水の巡りが乱れる → 内耳の水が滞る → めまい・耳鳴り

鍼灸治療の目的
①自律神経の調整
②内耳周囲の血流改善
③水滞の改善(体液循環の調整)
④ストレス緩和(肝気の調整)
⑤腎・脾の補強(体質改善)

鍼灸治療による臨床的な効果には
①発作の頻度が減る②耳閉感・耳鳴りが軽減する③めまいの予兆が弱くなるなどの報告があります。

よく使われる経穴(ツボ)
以下はメニエール病でよく使われる代表的な経穴です。
翳風(耳の後ろ)→ 耳周囲の血流改善、耳鳴り・耳閉感に
聴宮(耳前)→ 聴覚系の調整
聴会  → 耳の症状全般
完骨  → めまい・頭重感
風池  → 自律神経調整・頭部の血流改善
太衝  → 肝気の調整(ストレス対策)
腎兪  → 腎の補強(耳の機能と関連)
三陰交  → 水滞改善・自律神経調整

まとめ
①メニエール病は内リンパ水腫が原因
②めまい・耳鳴り・難聴・耳閉感が発作的に起こる
③医療では薬物療法と生活改善が中心
④東洋医学では「水滞」「肝気の乱れ」「腎・脾の弱り」と捉える
⑤鍼灸は自律神経調整・血流改善・体質改善を目的に行う
⑥耳周囲・頭部・足のツボを組み合わせて施術する

 セルフケア
① 生活リズムの安定(最も重要)
内耳の調整は自律神経に強く影響されるため、生活リズムの乱れは発作の引き金になります。
睡眠の確保  → 毎日同じ時間に寝て起きる
過労を避ける  → 長時間労働・連日の疲労を溜めない
ストレス管理  → 休息・深呼吸・軽い運動などで自律神経を整える

② 食事のセルフケア(内リンパのバランスを整える)
内リンパ水腫は体液バランスの乱れと関係します。
塩分を控える  16g前後が目安とされることが多い
水分をこまめにとる  → 脱水は内耳の血流を悪化させる
カフェイン・アルコールを控える  → 自律神経を乱しやすい
規則正しい食事  → 食事時間の乱れは自律神経の乱れにつながる

③ 発作の予兆に気づく
メニエール病は「予兆」を感じる人が多いです。
耳が詰まる
低音の耳鳴り
頭が重い
ふわふわする
こうした予兆が出たら、すぐに休む・刺激を減らすことが大切です。

 ④ 発作時のセルフケア
発作が起きたら無理に動かないことが最優先です。
横になり、頭を動かさない
暗く静かな場所で安静
水分を少しずつ補給
吐き気が強い場合は無理に食べない
※発作が長い・強い・頻回なら医療機関へ

⑤ 運動・体のケア
軽い運動は自律神経を整え、発作予防に役立ちます。
ウォーキング
ストレッチ
首・肩の緊張をほぐす体操
ゆっくりした呼吸法
激しい運動は逆効果になることがあるため、軽め・ゆっくりが基本です。

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